詩羽インタビュー「何も変わらずに自分のまま進んでいけるとは想像してなかった」 | Numero TOKYO
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水曜日のカンパネラ 詩羽インタビュー「何も変わらずに自分のまま進んでいけるとは想像してなかった」

二代目主演歌唱として詩羽が加入して初のEP『ネオン』をリリースする水曜日のカンパネラ。加入後初の新曲として昨年リリースされた「アリス/バッキンガム」をはじめ、楽曲制作を担うケンモチヒデフミのフリーキーでキッチュな音と言葉の世界、詩羽の伸びやかで表現力豊かな歌声がたっぷりと詰まっている。高校卒業後、“自己肯定感”をテーマにフリーランスでモデルの活動をしてきたという詩羽に、これまでのことや加入から約半年が経った現在地、ファッションのこと、様々なことを訊いた。

自身で切り開いた詩羽という存在

──水曜日のカンパネラの二代目主演歌唱として加入された経緯を教えてください。

「昨年の6月頃、知人からDMで『水曜日のカンパネラのDir.Fが会いたがってる』って連絡がきて、それでお会いしました。水曜日のカンパネラは中学時代に普通に流行っていたので、当たり前に知ってる存在でしたね。それでDir.Fさんに3回目にお会いした時に『二代目のボーカルにならないか』ってお話をされて、すごくフラットに『あ、やります』って答えました。それで家に帰って色々調べたら、自分が思った以上に水曜日のカンパネラっていうユニットが大きな存在だったってことに気づきました(笑)」

──モデル活動をしていた時はどんなヴィジョンを持ってたんですか?

「大学に通いながらだったので、就職するのかなと思ったこともあったし、演技のお仕事をする機会もあるのかなとか、漠然と色々考えてました。歌については、高校3年間軽音楽部でバンドのギターボーカルをやってて。WANIMAさんとかKEYTALKさんとか男性ボーカルの邦ロックのコピーバンドでしたね。好きで趣味で歌ってる感じだったので、音楽活動をしようとかは思ってなかったんです」

──中高生の時に今の詩羽さんに繋がるような転機があったそうですね。

「そうですね。中高の時、学生生活があまりうまくいってなくて、本当に自分のことが嫌いだったんです。でも自分のことを助けてあげられるのは自分なんじゃないかと思って、少しずつ詩羽っていう存在の形を探していきました。それまではごく平均的な格好をしていたんですけど、制服や校則がすごく窮屈で、『平均が正しい』みたいな風潮も息苦しくて。高校1年生の時に、明確に『自分はこうなんだ』っていう意志表示として頭を刈り上げて、そこから今の自分のベースができたと思っています。ネガティブをポジティブにするのってそんなに簡単じゃないけど、見た目は割と変えやすい。まずは外見から変えて自分に似合うものを見つけていくことで、必ずしも世の中の風潮が正しいわけじゃないということに気付いていった感じでした。今でも定期的に一週間に一回ぐらい刈り上げてるんですけど、短く刈り上げてるのが自分がかっこいいと思える基準ですね(笑)」

──影響を受けたカルチャーというと?

「矢沢あいさんの『ご近所物語』は母から姉に、姉から私にっていう風に家庭の中で受け継がれていったマンガで。ファッションがかわいいし、キャラクターひとりひとりに強いこだわりがあって、自分が好きなように生きているところに影響を受けましたね」

──Numero.jpのアートレーターのmightさんの連載「girl meets…」でイラストに文章を付けていただきましたが、普段から文章を書いてたりするんですか?

「フリーランスの活動をし始めた頃からInstagramに写真を上げるだけでなく、文字を添えるということはやってました。“自己肯定感”をテーマにずっと活動してきたので、『私はこういうことを感じているし、みんなも間違ってないよ』っていうことを伝えたくて、その写真に通じるような信条を書いてましたね。でも、イラストに言葉を書くということはmightさんの連載が初めてでした。例えば、“春”っていう言葉ひとつ取っても、人それぞれマイナスのイメージもプラスのイメージもあったりする。そういう言葉のおもしろさを感じましたね」

自分の好きなものを自由に表現する

──水曜日のカンパネラの二代目主演歌唱として活動する上で意識していることはありますか?

「コムアイさんが歌っていた『桃太郎』や『一休さん』を私が歌うと、同じ曲でも全然別ものになるっていう不思議な現象が起きていて。だから、初代のコムアイさんを意識しないことを意識しています。昔の曲を歌う時も、『これまではこういう風に歌ってきたんだよ』とか何の説明もなく、『詩羽が好きにかみ砕いて歌って』って感じなんです。歌以外についても、『詩羽は何がしたいの?』って問われる環境なので、自分の好きなままで自分を発信することが大事だと思っています」

──新作の『ネオン』というタイトルやジャケットのアートワークは詩羽さん主導で決められたそうですね。

「そうですね。デジタルEPを出すにあたり、『タイトル考えといて』って言われて、『そんな簡単に思いつかない!』って思って正直悩みました(笑)。とりあえず今気になってるものを調べてみたんですけど、そのひとつがネオンの看板で。ネオンを作る職人さんがどんどん減っていってるらしくて、それがコロナによっていろんな場所がなくなっていってる状況とも通じるような気がして、『光を消したくない』っていう思いが湧いてきたんです。ネオンっていう言葉にはラテン語で“新しい”っていう意味があるって知って、水曜日のカンパネラの二代目歌唱担当の初のEPのタイトルに相応しいんじゃないかと思いました。ジャケ写は、『銀色のアイテムが着たい』とか『髪型はこういう感じが良い』とか、自分の好きを全面に出させてもらいました」

──伸びの良い安定した歌声が印象的ですが、ご自分の歌の強みをどう捉えてますか?

「例えば新曲の『織姫』だったら、ギャルい感じの織姫のポップなテンションと彦星の切ない感情の時の声を使い分けて歌っていて、幅が広いとは思っています。頭で考えて『こう歌おう』っていうのができないので、その時に自分が感じた思うがままに歌っています。水曜日のカンパネラは楽曲の中で、現実には起きないことが起こっています(笑)。『そんなわけない』って思うと曲の世界に入り込めないので、『これが事実なんだ』って思うようにして向き合っていますね」

水曜日のカンパネラの詩羽が生まれた瞬間

──加入して約半年経ちましたが、一番の心境の変化というと?

「加入した頃と比べると、ライブパフォーマンスを頑張ろうという気持ちがすごくあります。あと、純粋にもっと歌がうまくなりたいと思うようになりましたね。お客さんから『詩羽様!』って感じで崇められるのではなく、同じ場所で生きてるできるだけ近い関係性でありたいと思ってるので、ライブ前や後、よくグッズ売り場に行ってお客さんと話したりするんです。そこで、『すごい良かったよ』とか言ってもらえたりすると、『もっと頑張ろう』って思う。一番初めのライブがパルコの屋上で、ステージの周りに360度お客さんがいる状態だったんです。高校生の頃にバンドでライブをやっていた頃は、後ろとか隣にメンバーがいて、前にお客さんがいる状態だった。ひとりで360度見渡してお客さんに何かを届けることはしたことがなかったので、あのライブがひとつ自分の中で水曜日のカンパネラの詩羽になったポイントだったと思います。前も後ろも目をキラキラさせながら見てくれるお客さんがいて、マスクで顔が隠れていても目で笑ってくれているのがわかったり、体から出る熱気も伝わってきて、そのおかげで私もどんどん楽しくなって熱量が上がっていったんですよね」

──水曜日のカンパネラに加入して良かったと思うことは?

「フリーランスの活動を続けていたら、例えばそのままモデルをやるにしても、俳優をやるにしても、音楽をやるにしても、自分らしいビジュアルのままで活動が続けられることって少ないと思うんです。就職したとしても、刈り上げがダメとかピアスがダメとか、いつかそういう環境に行くことになってしまうのかなとも思っていて。今みたいに本当に何も変わらずに自分のまま進んでいけるとは想像してなかったので、それが一番嬉しいです」

──SNSにアップしている私服もかわいいですが、ファッションのこだわりは?

「ファッションは自分のアイデンティティを出しやすい表現だと思っているので、『流行ってるからこれ着よう』とか、周りの目を気にすることなく自分の着たいものを着るようにしています」

──今やってみたいと思ってるファッションはありますか?

「既にやってるんですけど、まだそんなにアイテムがなくてもっと本格的にやりたいのは80~90年代のサイバーです。ネオンとサイバーとかスポーティーミックスに最近ハマってて。サイバースポーティーみたいな。今日の撮影はセルフスタイリングなんですが、そういう方向性を意識しました。髪を結んでいる黄色の紐はドクターマーチンの靴紐です(笑)。服に黄色が入ってるので合うかなと。あと、Y2Kも好きですね。2~3年前だったらルーズソックスを履いてる人はなかなかいなかったと思うんですけど、今はみんな当たり前に履いてて。私もルーズソックスだけでなく、今日もアームウォーマーを付けたり、流行も混ぜつつ自分の好きといい按配でバランスを取っています。何十年も前に流行ったファッションが時代が巡ってまた流行るのって、純粋におもしろいなって思います」

──では最後に、『ネオン』を作ったことで見えてきたビジョンはありますか?

「ビジュアルに関しては、割と振り幅が広いってわかってもらえると思います。今はかわいい系のイメージが多いんですけど、かっこいい系とか変な感じのアプローチも追究していきたいです。音楽面では、新しくなった水曜日のカンパネラをこれで知ってもらえたらこれからもっと攻められると思うので、そうやってどんどん新しい水曜日のカンパネラを作っていきたいと思ってます」

Digital EP「ネオン」
配信日/2022年05月25日(水)

収録内容
M-1 織姫
M-2 卑弥呼
M-3 エジソン
M-4 一寸法師
M-5 バッキンガム
M-6 アリス
M-7 モヤイ
M-8 招き猫
全作詞作曲:ケンモチヒデフミ

各配信先/https://wed-camp.lnk.to/neon
「織姫」先行配信中

水曜日のカンパネラ 対バンツアー2022〜Neo poem〜
6/22(水) F.A.D YOKOHAMA
6/26(日) 名古屋 CLUB UPSET
7/2(土) 仙台 CLUB JUNK BOX
7/15(金) 福岡 The Voodoo Lounge
7/17(日) 岡山 PEPPERLAND
7/18 (月祝) 大阪 Shangri-La
7/29(金)札幌 mole
7/31(日)沖縄 Output
前売:¥3,800
チケット一般発売:5/28(土)〜

ワンマンライブ2022〜Neo poem〜
8/3(水) 恵比寿LIQUIDROOM
前売:¥4,000
チケット一般発売:6/25(土)〜

詳細/http://www.wed-camp.com/

Photos:Takao Iwasawa Interview & Text:Kaori Komatsu Edit:Naomi Sakai

Profile

ユニット「水曜日のカンパネラ」の主演/歌唱担当。メンバーはコムアイ(主演)、ケンモチヒデフミ(音楽)、Dir.F(その他)の3人だが、表に出るのは主演のコムアイのみとなっていた。2021年9月6日、コムアイが脱退、二代目として主演 / 歌唱担当に詩羽(うたは)が加入となり新体制での活動がスタート。同年10月27日、新体制後初の新曲「アリス / バッキンガム」をリリース。12月8日 ( 水 ) に WALL&WALL で開催した新体制初の主催リリースパーティー<LET’ S PARTY>は一般発売後数分でSOLDOUT。22年5月25日には詩羽体制初の EP『ネオン』をリリース予定。6月からは詩羽体制初の全国ツアー「水曜日のカンパネラ 対バンツアー 2022~Neo poem~」を開催。8月3日には初のワンマンライブを恵比寿 LIQUIDROOMで開催することも発表している。

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