People / Interview

藤原紀香がサザエさんに!?

あの『サザエさん』が舞台になる。アニメから10年後の設定で繰り広げられる今回の芝居では、波平は引退、マスオは出世、カツオは大学生……と一家を取り巻く環境は様変わり。サザエを演じる藤原紀香が語る、いまこそ考えたい家族のこと。

サザエ、モードを着こなす!?

──動画の撮影をした感想は?

「出来上がりが予想できなかったのでワクワクしていました! お魚くわえたドラ猫を追いかけている気持ちで一コマずつ動いてみたら『走り方って、こうだっけ?』と、基本的なことがわからなくなって面白かったです(笑)。サザエさんに変身すると、いつもあのテーマソングが頭の中で流れて。今ではスマホの着信音もあの曲。流れると周りのみんなが『おー、サザエさん!』となり、場が和むんです」

──紀香さんにとってサザエさんはどんな存在ですか。

「子どもの頃から見ていたので、とても身近ですし大好きなアニメです。母がわりとおっちょこちょいで、それを私も受け継いでいて(笑)、何かやらかすと家族で『サザエさんか!』とつっこむのが日常会話でした。三つ子の魂百まで、と言いますが、相変わらずおっちょこちょいなところがあるので、やらかすたびに夫からも『サザエさんやなぁ』と笑われます。

私は高校時代、落語研究会に入っていて、その時の高座名が親和亭カツオ(笑)。苗字は神戸親和女子高等学校から、名はみんなサザエさん一家の名前をいただいていました。私はサザエが希望だったのですが、私のキャラクターから『あんたは、カツオや』と部長から言われ、そのままカツオになりました(笑)。当時は落語と漫才や文化祭の司会などをやっていましたね」

──では、今回、サザエさん役のオファーが来たときはどう思われましたか。

「大好きなアニメですし、日本一有名な家族といっても過言ではないこの一家の一員をつとめられるなんて、こんな幸せなことはありませんので嬉しかったです」

──サザエさんの扮装がとてもお似合いですね。実際にこのアイコン的な髪型になったお気持ちは?

「サザエさんヘアは、実は、モードなんだなと感じています。このヘアスタイルには、サザエさんの衣装しか合わないだろうと思っていたのですが、公演が行われる福岡や東京でのプロモーションなどで、モードなファッションを合わせてみたら……! なんと予想以上にしっくりとマッチして、周りの方々も驚いていました。長谷川町子さんが描かれた昔の挿絵や漫画を見ると、サザエさんって実におしゃれですよね。サブリナパンツやミニワンピに、ハイヒールやスカーフを合わせて、ツィギーを思わせるファッション。色や柄合わせも当時の流行が反映されていたり。サザエやワカメのヘアスタイルも、きっとそんな流行りを考えていたんじゃないかしら? とご存命でしたら長谷川町子さんに聞いてみたいと思いました。

実はこの髪型、実写で作るのは大変。初めてポスターを撮ったときには2時間くらいかかりました。80パーセントは自分の髪で作っているんですよ。角度によっても表情が変わるのでバランスも難しくて。ネットで調べると、実写化が難しいアニメのヘアスタイルの上位に入っていました(笑)。アニメの昔の回では、サザエさんが腰くらいまである長髪で、鏡台の前で鼻歌を歌いながら髪をとかすシーンがあるんです。そこにワカメやカツオがやってきて『姉さんって、そんなに髪が長かったっけ?』なんて聞いていて、とても面白かったですが、サザエさんがロングヘアなのには驚きました!」

あれから10年、サザエ一家の新たな局面

──サザエさんはどんな女性だと思いますか。

「この舞台はアニメの10年後のサザエさん一家の物語です。と言いつつも、彼女は相変わらずおっちょこちょいでお調子者で、波平父さんやフネさんにいつも叱られていますが、活発明朗なサザエさんがいるだけで周りがパーっと明るくなるひまわりのような女性。持ち前の朗らかな人間力で、家族に勃発する問題を解決していくのだろうなあと思います」

──10年とはかなりの年月ですね。カツオやワカメ、タラちゃんなど子どもたちは大きくなっているでしょうし、家族の状況も変わっていそうです。

「はい。父さんは定年退職して、母さんは悠々自適な毎日で、マスオさんは出世して毎晩帰りが遅く、カツオは大学生で、『よく受かったなぁ、やはり要領いいんだな』って思ったり(笑)。ワカメは服飾の専門学校でデザイナーを目指していて、タラちゃんは中学受験に向けて勉強中。子どもたちも大きくなると、家族団欒がなかなか難しくなるものですね。

タマもおじいちゃんになったけど元気に暮らしていて。今回、酒井敏也さんがタマ役なのですが、人間の言葉を話すかもしれませんよ。マスオ役の葛山信吾さんは4度目の夫婦役。松平健さん演じる目力が強い波平さんは、最高に波平で、美人で優しい高橋惠子さんのフネさんも素敵で、若い世代の出演者も多くて、みんな本当に面白いほどハマっています。このメンバーでの『サザエさん』、ぜひ見届けてほしいです」

──サザエさん一家みたいなホームドラマは、今、貴重だと思います。家族について考えることはありますか。

「はい。昭和、平成、令和と変わるにつれ、家族のあり方が変化し、みんなで食卓を囲んで団欒する時代ではなくなってきています。サザエさん一家もそれぞれの環境が変わり、様々な問題も生まれてきています。それでも家族ってかけがえのないもので、美味しいものを皆で食べて、たわいもない話を話すことの大切さをじわじわ感じます。この舞台には、多くの若い世代も観に来られると思うのです、家族の温かさや団欒の大切さを伝わるのではと思います。サザエさん一家でよく見られる、家族でちゃぶ台を囲む昭和の風景も失くしたくないものですね。

私の実家では、揃って姪っ子甥っ子の誕生日を大家族で祝うので、時間があれば、ふと帰ったりします。それぞれが社会の中で戦っていて、でも帰る場所はここなんだって。家族のありがたさ、を感じられる舞台になればいいですね。

ちなみに私は、アニメ『サザエさん』で、いつも窓の外が気になって。居間の奥に窓があり、そこから見えるお庭の花が季節により変わります。6月、7月は紫陽花、8月、9月にはサルビアというように、春夏秋冬の移り変わりを感じることができる。食卓の料理も、お素麺とか鍋物とか旬の味覚なんですよね。日本の四季の良さも伝えている素晴らしい作品ですよね、サザエさんって」

──サザエさんの街である桜新町に行かれたり、随分リサーチを重ねたとか。

「脚本を読んで、なぜサザエがこのセリフを言うのか、その理由を探るために過去の漫画を読み直したり、ご先祖様について調べたり。波平のご先祖様がとても長い名前の人物だったりと、多くの発見があります。サザエさんのカルトクイズに答えられるくらい、勉強しました(笑)。

九州・福岡にある『サザエさん通り』も歩いてきました。長谷川町子さんが一家の海にまつわる名前を思いついたのは、福岡のももち浜を散歩していた時だそうです。だから、ももちの海岸跡あたりは『サザエさん発案の地』なんですね。通り沿い、西南学院の前にはサザエさんと長谷川町子さんが立ち話をしている銅像がありました。界隈は煉瓦造りの建物が並び、文化的で洗練されたおしゃれな町。ああ、ここからサザエさんのファッションが生まれたんだなぁと。私が生まれた神戸と少し雰囲気が似ていて、とても好きになりました」

──最近、舞台にコンスタントに立たれています。舞台はお好きですか。

「はい、好きです。舞台は、撮り直しの効かないワンテイクの世界、あの大きな空間を自分のものにできるか、演技、声量、表現力、など役者としての技量を試される場でもあります。一期一会のお客様に、完成したエンターテイメントを日々お見せしなければいけません。毎公演、お客様の反応が異なり、ものすごく怖いし、時には衣装をつけていても裸のように思えるほど。細胞が震えるくらい厳しい世界だと思います。公演中はモチベーションを保つのが大変で、研ぎ澄まされた精神と体力とを持ち合わせていないとつとまりません。だからこそやり甲斐を感じますし、年齢を重ねても続けたいです」

舞台 サザエさん

<東京公演>
日程:2019年9月3日(火)~17日(火)
開演時間/11:00・16:00
会場/明治座
住所/東京都中央区日本橋浜町2-31-1
[問]明治座チケットセンター Tel/03-3666-6666(10:00~17:00)
www.meijiza.co.jp/ticket

<福岡公演>
日程:2019年9月28日(土)~10月13日(日)
開演時間 11:00・16:00
会場/博多座 福岡県福岡市博多区下川端町2-1
[問] 博多座電話予約センター Tel/092-263-5555 (10:00~18:00)
www.hakataza.co.jp

www.sazaesan-stage.jp

Animation:Charles Chung Photos : Kouki Hayashi Interview & Text:Maki Miura Edit:Chiho Inoue, Yukiko Shinto

Profile

藤原紀香Norika Fujiwara 1971年6月28日、兵庫県生まれ。92年、ミス日本グランプリを受賞し、デビュー。CMやテレビドラマ、映画、舞台、司会など幅広く活躍。主演したドラマは『ナオミ』『スタアの恋』『大奥~華の乱』など多数。そして、『南太平洋』『キャバレー』『華の太夫道中』など近年は、舞台でも活躍している。

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