People / Interview

女優、貫地谷しほりの決断「21歳で大学を辞めました」

演技派として各方面から高い評価を受ける女優、貫地谷しほりが登場。放送中のドラマ『早子先生、結婚するって本当ですか?』では、婚活に励むアラサー女子を演じる。自身も結婚や仕事への思いが揺れ動く30歳。女優としてのターニングポイントやリアルな日常を教えてくれた。
(『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2016年6月号掲載)

──木曜劇場『早子先生、結婚するって本当ですか?』では、結婚願望が強く婚活に励む小学校教師・久我山ミカ役。貫地谷さんご自身の結婚願望は?

「女性って皆そうだと思うけれど、結婚したい時期とそうではない時期がありますよね。私も10代の終わりと20代半ばの頃は結婚したかったけど、今はあまりないです。でも台詞で『老後、独りでいたくない』『何となくふと寂しくなる瞬間、わかります』とあって、ああ、それわかるなぁって。毎日楽しくて、現状に不満はないのですが…。撮影が終わる頃には私も結婚したいと思えたらいいかなと思っています」

──ミカとして、このドラマを通して伝えたいことは何ですか。

「例えばハイスペックな男性なら多少のことには目をつぶって結婚する、というのも一つの価値観かもしれません。でも本当に好きな人と一緒になれたら、その先も自分に正直に生きていけるはず。自分の気持ちに素直に生きるって、簡単そうで尊いことだと伝えたいです」

──貫地谷さんはちょうど30歳。楽しい年頃に入ってきた感じ?

「いや、今はまだ20代のブランドを捨てたショックが大きくて(笑)、若さで許されない年齢に入ったなと。大人の女性のイメージとしては、安い焼酎を何杯も飲むのではなく、いいワインを適度に嗜む! あとはエロ気ではなく色気がある。大人になると、やっぱり品が大事ですよね」

──今までを振り返り、お仕事のターニングポイントはいつでしたか。

「まず中学生でスカウトされて、それまで考えたこともない道が目の前に広がりました。こんな世界があるのかとゼロからのスタート。飛び込んでみたものの、オーディションに全然受からず、母の知り合いが紹介してくれた演劇のレッスンに中3から高2まで通っていました。そこは発声や演技のメソッドではなく、物を見る目や物事を考える力、生活に大事なことなどを教えてくれる場でした。現代にもいいものはたくさんあるけれど、50年たっても親しまれている映画や音楽、芸術に触れなさいとも。チャップリンの映画を見たり、岸田國士や菊池寛の戯曲を演じたりしていました」

──中高生にしては敷居の高い戯曲ではありませんでしたか。

「よくあんな大人の芝居をやっていたなと思いますけど、面白かったんですよ。年齢を重ねるにつれて、あの芝居はこういう意味か!と広がってゆく。芝居の基本を学ぶ良い経験でした。同時にエンターテインメントは社会に何かを訴えるものだとも教わりました。当時、9.11があり、そのときは1カ月間ずっと議論を。だから今でもニュースを見ることは日課です」

──それから仕事は順調に?

「いえ、仕事がずっとあるのか不安で大学に進学しました。でも一限の授業のためには起きられないのに、早朝ロケにはパッと目が覚める。だんだん何が好きなのかがはっきりしてきたんですね。その頃に出ていた舞台『労働者M』の演出家ケラリーノ・サンドロヴィッチさんに『おまえ、将来何やりたいんだ』と聞かれて、『その時やりたいことをやっていたらいいなと思います』と答えたんです。すると『俺は将来女優をやろうと思っていない人間と仕事しているのか!』と言われて。確かに…と、21歳で大学を辞めました」

──退路を絶ったというか、女優としての気持ちが固まった。

「両親に授業料を払ってもらって、卒業しないのは申し訳ないと思ったのですが。両親に話したら、女優をやるのならちゃんとやりなさいと言ってくれて。直後にNHK朝ドラ『ちりとてちん』が決まったので、やはり覚悟が必要だったのでしょう」

──それからしっかりと女優業を歩まれて、いま思うことは?

「この間、知り合いに山崎努さんの著書『俳優のノート』を渡されたんです。山崎さんが舞台『リア王』をやるにあたって、2年前から準備した日記をまとめたもので、役へのアプローチや台詞との向き合い方などが書かれていて、すごく刺激的でした。まず、2年前から準備するってすごいじゃないですか…。この仕事がここまで尊いとわかっていなかった。だからもっともっと知りたいと思いました。果たして自分は出演作にここまでちゃんと愛情を注いできたかと問うと、まだまだ注げるなと。だから出演作を全部好きになろうというのが今年のテーマです」

──女優として充実していらっしゃるようですが、私生活では変化がありましたか。

「この一年で、テレビを見るようになりました。これまでは忙しすぎてアウトプットばかりでしたけど、インプットできる時間も欲しいなと。芸人さんもたくさん覚えましたよ。世の中にはこんなに面白い人たちがたくさんいるのかと勉強した感じ。『やっべぇぞ!』が好きで、よく使います(笑)。また家でどう快適に過ごすかにも興味が湧きました。生活の場を見直している最中です」

──いま生活の場でこだわっていることは?

「米の選び方です。この料理ならこの米とか。例えば普段は玄米を食べているのですが、カオマンガイのときは、玄米は味が染みないので、栄養素が近いローカット米を使います。私、納得できないもので太りたくないんですよ。太るならおいしく食べて太りたい(笑)」

──確かにそうですね! もし一日ぽんと空いたら、何をしますか。

「12時間は寝たい。睡眠が一番、肌も心も復活します。残りはすごく好きなお蕎麦屋さんを訪ねたり、デパートでコスメカウンターを回りまくる、友達とご飯に行く、気が向いたら掃除する」

──コスメカウンターを回る楽しみってどんなところ?

「私の周りは映画、漫画、芝居などいろんなジャンルのオタクが多いんです。私はあえていえば漫画好きぐらいで、オタクに憧れていて。そこまで突き詰めて好きなものがあるって、その人の個性だから羨ましいなって。そうしたら友達に『メイク大好きじゃん』と言われて、私メイクオタクなのか!と気づき、さらに買うようになりました。今日もヘアメイクさんに『貫地谷さんに会うといつも美容情報が更新される』と言われて、うれしかったです(笑)」

──最後に、もし生まれ変わるなら、男性と女性、どちらがいいですか。

「どっちでもいい(笑)! でも10代からこの仕事をしていて、自分でアレもコレもしちゃいけないと縛りをかけてしまう部分があるから、ナンパな生き方に憧れますね(笑)」

ドレス ¥71,000/Sayaka Davis ネックレス ¥50,000/Adeline Cacheux (ともにジャーナル スタンダード 表参道)

Photos:Gen Saito Styling:Nobuko Ito Hair & Makeup:Ichiki Kita 
Interview & Text:Maki Miura Edit:Saori Asaka

Profile

貫地谷しほり(Shihori Kanjiya)1985年生まれ、東京都出身。2002 年のデビュー以来、映画『スウィングガールズ』(04年)などに出演。オーディションにより07年NHK連続テレビ小説『ちりとてちん』主演。翌年、エランドール賞新人賞受賞。13年には『くちづけ』で映画初主演を務め、第56 回ブルーリボン賞主演女優賞を受賞。

Recommended Post

Magazine

ec

JULY / AUGUST 2020 N°138

2020.5.28発売

Time is Precious

時間が教えてくれること

オンライン書店で購入する