旅に魅せられた6人の俳優たち。何が彼らをアクティブにさせるのか。カメラの向こうには未知なる冒険が広がっていた。第2回目は、フォトエッセイも出版している玉置玲央に話を聞いた。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2025年6月号掲載)

自分が求めていた色を見つけると、シャッターを押したくなる
仕事がひと段落すると、どこかへ旅に出かけます。芝居に取り組んでいる間は作品のことが頭の中に渦巻いているので、“毒抜き”のために日帰りの小さな旅に出ることもあります。海外や国内旅行にも行きますが、気分転換が目的なので散歩でもいいんです。散歩や旅をしながら、プラスやマイナスに過剰に振れてしまった針をゼロに戻して、同時に充電もして、自分自身をフラットな状態に戻しているんだと思います。

旅の行き先は、自然のある場所を選びます。散歩をするときも、情報量の多い表通りを避けて一本裏に入ったり、今日もここ(恵比寿のスタジオ)に来るときに、コンクリート造りの近代的なお寺を見つけて少し中を覗くと、本堂と墓地のグレーの色彩の中に、真っ赤な椿の花が咲き誇っていました。そんな光景に出合うとうれしくなります。
以前、乗馬の練習のために山梨の牧場に通っていたことがありました。あえてタクシーを使わずに駅から30分かけて歩いて向かっていたんですが、山の中の道は誰ともすれ違いません。普段は対人間の仕事なので、そんな一人きりの時間も僕にとっては“旅”でした。
そんなときに、いつも一緒なのがカメラです。高校の頃にフィルムカメラを譲ってもらって以来、写真が好きになり、今ではデジタルとフィルム合わせて何台か所有しています。いつも持ち歩いているのはソニーのミラーレス一眼カメラ。レンズは祖父が昔、使っていたオリンパスのオールドレンズです。

写真において自分がいちばん大切にしているのは「色」です。偶然出合った景色の中に自分が求めていた色を見つけると、シャッターを押したくなる。昔、油絵を勉強していたこともあり、一枚の写真の中に現れる色彩や、色のバランスに無性に惹かれてしまうんです。
もともとは誰かに見せるために写真を撮っていたわけではないのですが、3月に初めてフォトエッセイを出版しました。普段「音と感情」で表現している自分にとって、「文字と祈り」で伝える作業は新しい挑戦でした。今、こうして話しながら「祈り」という感情は自分の根底にあるものだと気がつきました。山梨の牧場も最終目的地に知り合いの牧場スタッフがいるから歩いていけるし、フォトエッセイも、どんなふうに受け取ってくれても構わないから、誰かに届いてほしいと思って作っていた。僕は、最終目的地に誰かがいることを願いながら、表現活動をしたり旅をしたりしているのかもしれません。
Photos:Reo Tamaoki Interview & Text:Miho Mastuda Edit:Mariko Kimbara
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