バレエダンサー 飯島望未世界に挑戦する彼女が叶えたい夢 | Numero TOKYO - Part 2
People / Interview

バレエダンサー 飯島望未
世界に挑戦する彼女が叶えたい夢

バレエ・ダンサーとして世界を舞台に活躍し、インスタグラムを通してファッショニスタとしても注目を集める飯島望未にインタビュー。

cointreau nozomi iijima
cointreau nozomi iijima
人生の転機になった作品と講師の言葉 ──在籍中ターニングポイントになった作品はありますか? 「バレエ団に入団した当初、同期の子は『くるみ割り人形』でちょっと良い役をもらっていたのに、私はその他大勢みたいな役しかもらえない時期がありました。全然ダメだなと落ち込んでいたときに、バレエ団のガラ公演の出演者が壁に張り出されて、突然「ダイバージェンス」という作品のソロパートに、私の名前が入っていました。びっくりしましたが、これはチャンスだ!と思って、猛練習を重ねて本番も満足する出来で踊れました。そこから徐々に役をもらえるようになりましたね。その後は、ニューヨークシティバレエ団の元プリンシパル、ジョージ・バランシンのミューズのために作られた作品で、主役に選んでもらったこともありました。そのときのディレクターは、若いときの自分に私が似ていて、エネルギーが有り余っていることを評価してくれたみたいで(笑)。気持ちが悪くなるくらいダメ出しをされましたが、私に期待してくれたことに感謝しています」 ──ソリストになってからは、どんな役柄を踊りましたか? 「ソリストになってからは、ラッキーなことに『白鳥の湖』など色々な演目に出演させてもらいました。特にウィリアム・フォーサイス振り付けの『イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレベイテッド』は、ずっと踊ってみたかった作品。メインの役をもらったときは、とても嬉しかったです」 ──プロになってからもコンクールには挑戦していたのでしょうか? 「ミシシッピ州で4年に1度開催される『ジャクソン国際コンクール』など、プロのダンサーも参加できる大会はあります。でもコンクールにあまり興味はないというか、懲りたというか(笑)。実はプロになる前、スイスで開催されるローザンヌ国際バレエコンクールに挑戦したこともあるんですが、セミファイナルで落とされてしまって。自分の中では満足できる踊りだったし、周りも褒めてくれるような出来だったので、自己嫌悪に陥ってしまいました。その時、同じコンクールでかつて1位を獲った審査員の男性ダンサーが話しかけにきてくれて『バレエは紙切れ一枚で決まるものじゃないから心配しなくていいよ。ただの紙と数字だから』と言ってくれました。その言葉にすごく救われて、当時の私は思わず泣いてしまったんですが、そこからコンクールが全てじゃない、だったらプロとして頑張ろうと考えを変えることができました」 ──ソリスト昇格後1年、24歳という早さで退団されますが、他に新たな目標ができたとか? 「退団する2~3年前から、コンテンポラリーというか、クラシックバレエ以外のジャンルを本格的にやりたいと感じ始めて、ヨーロッパのバレエの在り方に興味を持つようになりました。見た目が美しくて、型に忠実であればそれで良し。明確なストーリーがあって、感情もマイムで伝わるクラシックバレエは大好きですが、それに比べてコンテンポラリーは、見る人によって解釈が違ったり、ダンサーの身体の中から湧き出る感情やエネルギーがすごい。ヒューストンのバレエ団では、良い役をもらっていたし、居心地もよかったのですが、8年間ほぼ同じメンバーで生活してきた環境や自分への甘えなども含め、ここで踊り続けても、これ以上大きな成長はないと感じるようになりました。それで辞めるなら今しかないと、自分を進化させる意味も込めて心機一転。昔から、きっと常に刺激を求めるタイプなんですよね(笑)」 ──現在はフリーのダンサーとして一時帰国中。帰国してバレエを客観視することで、何か違いなどを感じますか? 「海外のバレエは労働組合があるし、一つの企業としてきちんと成り立っています。バレエダンサーも職業として確立されていますが、日本はそうじゃない。ひどいところはスクールでバレエを教えながら、自分も舞台のリハーサルに出て、お給料は歩合制というバレエ団もあります。どれだけ踊らされても残業手当は出ないので、バイトを掛け持ちしている子も多い。もちろん全てではありませんが、日本で企業として成り立っているバレエ団はほんのわずかです。 ──バレエを観に来る人々にも違いはあるのでしょうか? アメリカやヨーロッパでは一番安いチケットが25ドル位で買えるので、若い人でも気軽にバレエを楽しみます。でも、日本でバレエを観に行くのは、自分や親戚、友人などがバレエを習っているような関係者ばかり。アートやクリエイティブ系の人もいますが、普通の学生はまず興味を持ってくれません。例えば、衣装をスタイリッシュにしたり、音楽をクラシックじゃないものにしたりなど、バレエも映画と一緒で、劇場で見るからこそ雰囲気や空気感を感じることができるもの。もっと気軽にバレエを楽しんでほしいです」

従来のバレリーナの イメージを覆す独自のファッション

Ms.COINTREAU

Photos:Satomi Yamauchi 
Hair&Make:Fumiko Hiraga
Interview&Text:Anri Murakami(WWD JAPAN)
Edit:Yukiko Shinmura

Profile

飯島望未(Nozomi Iijima)バレエダンサー。大阪出身。6歳からバレエを始める。13歳で『ユース・アメリカ・グランプリ』3位に入賞し、奨学金を獲得。07年15歳で単身渡米する。ヒューストン・バレエ団の研修生になり、翌年同バレエ団とプロ契約を結ぶ。13年米ダンスマガジンにおいて「25人のいま観るべきダンサー」に選出。14年ソリストに昇格し、『白鳥の湖』や『くるみ割り人形』などのクラシックバレエの作品だけでなく、ウィリアム・フォーサイス振り付けの『イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレベイテッド』などのコンテンポラリー作品でも高い評価を得る。15年同バレエ団を退団。帰国後は、日本を中心に精力的に活躍。16年8月からはスイスのチューリッヒ・バレエ団への所属が決定している。

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