小室哲哉が語る、今の想い | Numero TOKYO - Part 2
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小室哲哉が語る、今の想い

Special Interview 小室哲哉が語る、今の想い
Special Interview 小室哲哉が語る、今の想い
人間も二進法で動いている!?
──小室さんの音楽の分析の仕方に昔から感銘を受けていました。「高音のリフレインは人の耳に残りやすい」とか、ヒット曲を理論的に分析する人はそれまでいなかったので、戦略家だと思ったのと同時に、見えている世界が違うんだろうなと。
僕は考え方が完全にロジカルで、そうでないと納得がいかないですね。
──それは、音楽に限らず?
ええ、音楽に限らず。…まぁ僕の本業が音楽家なのでそこに行きつくんですけど、車でも服でも、世の中に理論的じゃないものは何ひとつないですよね。論理的でない車は動かないし、服でも最終的に美しく見えなかったり、歩きづらかったり。ビジュアルの効果で魔法のように美しく見えたりしますけど、でもすべてのことは理論で成り立っている。不思議なものはないという考えですね。
──でも感情は、理屈では説明がつかないじゃないですか。
説明…つくんですけどね。人間ってすべて電気で動いているので、脳も電気を使って情報伝達しているんですね。
──…え。よく言われる「恋に落ちる」という現象も…?
電気です。僕は人間も「二進法」で成り立っていると思っていて。二進法というのはコンピュータで使われているんですけど、0と1しかない世界のこと。この2つの数字で数を増やすとすると、0、1、その次は10、11、その次はいきなり100になるんですね。この11から100に移行する時に、とてつもないエネルギーが動く。恋愛感情みたいなものは、おそらく熱を強烈に放つこの時に生まれるのだと思います。
──最愛のパートナーであるKCOさんとの深いつながりは、ソウルメイトだから…などと非科学的な人間は解釈してしまうのですが(笑)。
いや、そういう話で全然いいんだと思いますよ(笑)。脳外科の先生たちだったら、数値的な話で盛り上がるのかもしれないですけど。
──その理論だと、KCOさんと知り合われたのは95年、結婚したのが2002年で、100になるまで時間がかかったということですか?
相性みたいなものは、簡単に言えば、最大公約数の考え方。最終的な数字はぴったり合うけれど、その合うところがとてつもなく遠いというかね。でも、僕らの場合は、はたから見たらイライラするくらいお互いにシャイだったので、結局、相当な時間がかかっちゃったんですけれども。あとは、制御というものが働いて…。
──あまりにも身近な存在で…?
そうですね。あえてバリアを張っていたのだと。彼女との関係も、偶然とか奇跡という表現をする人もいると思いますけど、僕はそうは思わないんですね。ポイント、ポイントで見ていくと、ふたりがくっつかないはずがない。だから、すべて計算上そうなるようになっていたんじゃないのかなと思うんです。
──すべてつじつまが合うと。
そうなんです。日にちのズレとか、ここで誰かが間違えなかったら、この日のオーディションには来なかったとか。そういうのも全部、数字で。
──絶対数みたいなことですか。
僕、数字は本当に信じますね。「運命は定められている」と言うつもりはないんです。それだと、偶然とか奇跡とかの解釈になってしまうので。ただ、数字的な見地から、ほぼ「予測」はできると思います。
──小室さん自身は感情的なアップダウンが少ないので、その穏やかな波動は、今のKCOさんには癒しの効果があるでしょうね。
うん。でも今は僕のほうがもらっていると思います。実働として彼女から何かをしてもらっているわけではなく、やっていることは僕のほうが多いかもしれないですけど、癒しの波はもらっているかも。
Photos:Kazunali Tajima Styling:Sachi Miyauchi for Self Interview & Text:Atsuko Udo

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